台風と定置網

 台風12号のため、一時的に網を撤去していたのですが、1か統を先週火曜日、もう1つを土曜日に復旧しました。今日より通常操業再開です。 *1

 この台風ですが、定置網漁にとって非常に頭が痛い存在です。
 まず一つは台風が近づくと海が荒れて操業に危険が伴う、または操業そのものができなくなります。
 もう一つは、こちらの方が大きな問題なのですが、台風通過後は速い潮の流れが発生するのです。
 気圧配置によって大気に風が発生するように、海にも潮の流れというものがあります。一般的に知られる寒流・暖流以外にも、その日の風向きや潮の満ち引き、気温水温その他様々な要因によって、局所的な潮流が発生します。
 その発生メカニズムはまだ未知な部分が多く予想もまた非常に難しいのですが、台風などで強い風が吹くと急激に速い潮(急潮)が発生することが経験上知られています。
 この時の潮の速さですが、台風通過後にしばしば1ノット(秒速0.5メートル)を超えます。流速0.5m/sと書くとたいしたことが無いように思いますが、風が空気の流れであるのに対し、潮は水の流れです。
 大学で流体力学などの授業を受けた方はご存じかと思いますが、おおざっぱに書いてしまえば、流体による抗力はその粘性係数(粘度)に比例します*2
 水の粘度は空気の約50倍ほどですから、1ノットの急潮が網に加える力は、陸上の風速25メートルに相当します*3。風速30メートルほどの台風で、屋根瓦や看板が吹き飛んだり、山崩れが起きたりすることを考えれば、その恐ろしさがわかるかと思います。
 というわけで、台風接近時には網を陸上に揚げたり、ロープを付けて海に沈めたりして「緊急避難」するわけです。
 
 ちょっと長くなりましたが、台風と定置網の関係でした。

*1:そもそも操業を一時停止していたことをこのブログで報告していなかったのですが、、、。

*2:本当に大ざっぱな議論。実際には、網は複雑な形状をしているのでもっと複雑な議論をする必要があるし、ニュートン流体ではないため、風速25メートルの空気と流速0.5メートルの海水を単純に比較することも本来はできない。大学の時の参考書をざっと読み返してみたんだけど、ここで説明するのはちょっと大変。

*3:前述したように、あくまで大ざっぱな目安。一応念のため。